「われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」特集(ゲスト:最果タヒさん)

この番組は、毎週日曜の朝にお届けする、
「文化の楽しみ方」が わかる、見つかる、共有できる! カルチャー、アートプログラム、 
明治産業プレゼンツ「OUR CULTURE, OUR VIEW」。  
あなたの暮らしを豊かにするヒントを、 オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、 はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。 


今週は、現在福岡市・天神イムズの館内のインスタレーション展示と、同じくイムズ8階の(番組ではおなじみ)三菱地所アルティアムにて開催される
『最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』について、最果タヒさん、ご本人に独占インタビューした模様をお届けしました。

《最果タヒ展 メインビジュアル-三菱地所アルティアムHPより》



【詩人・作家 最果タヒプロフィール】
2006年、現代詩手帖賞受賞。第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。
その他、様々な著書があり、作品は小説、エッセイ集多岐にわたります。
2018年に太田市美術館・図書館での企画展に参加、2019年に横浜美術館で個展開催、HOTEL SHE, KYOTOでの期間限定のコラボルーム「詩のホテル」オープンなど、幅広い活動が続きます。

放送では、最果さん、ご本人について。詩や言葉について、そして今回の展示についてお聞きしました。
こちらからの質問へ、お答えなる言葉、ひとつひとつの表現があまりにも素晴らしく、ともやすさんも、三好Pも二の句が告げず、ただ、もうウットリしてしまう場面が何度もあったという充実のインタビューです。


まずは、意外な詩を紡ぐようになったきっかけや、ご自身の詩に触れた方々の感想からお聞きしました。

―最果さん  最初、一番びっくりしたのは、同じ詩でも、人によってポジティブに受け取る人、ネガティブに受け取る人がいて、とらえることが全然違っていて、それは面白いと思いました。
読むって行為って、一方通行的なイメージを持たれがちですが、私の中では、読む人の好きな言葉とか、こういう風に見えるという、能動的な行為だと思っていたんです。詩を読んだ感想をもらうことで、やっぱりそうなんだなと思うことが多くなりました。
詩を読んだ人のその人自身の詩に生まれ変わっている、その人が読むことによって、自分の詩が、その人の中で完成している感じがして、それが嬉しいです。

―ともやす  受け取る側も含めての詩ということですか

―最果さん  そうですね。コントールできないと思っているので、どう読んでほしい。こういう解釈が正しいとかは、あまり考えていません。
どちらかというと、読む人がどうとらえるか。
よく、詩集を読むたびに好きだと思う詩が違うって言われます。

*****

―最果さん  読む人は、自分の生活とか、その日起きたことを背景にして読んでいるんですよ。だから私がそれをコントールしようとするのは図々しいことかなと思って。

その人の生活というか、立ち入る隙がないくらい読んでほしい流れを作ってしまうと、その人の生活に溶け込んでいかないから、それはよくないと思っています。

*****

―最果さんの思うラジオという媒体とは。

―最果さん  ラジオって生活の中に音声だけが流れるから、自分の部屋が、ラジオから語られてる言葉の背景になっている。その分言葉が、断片的に自分の奥の方に入ってくる瞬間があるというか、文脈とは別で、何か一言がふっと残って、次の日も残っているみたいなのが、面白いところかなと思っています。


今回のインタビューの中で、幾度となく出てきた「人それぞれ」というキーワード。

―最果さん  映画とか見た後のレビューで、意見が違えば違うほど面白いですよね。
言い合えるからおもしろい!
片方が、「こうです!これが正解です!」
と言い、もう片方が「私は、こう読んでなかった、間違えた……」と思ってしまうことは
辛いこと。
人それぞれ、違う日々を生きていて、全然違うことを考えて暮らしているので、同じ作品を見ても、全然違う風に見えるというのは、「自分が自分でしかいないんだ」っていうのを実感する瞬間。それはさみしい孤独ではなくて、ほっとする部分、自分しかもっていない自分がある、そういうのは大事にしておかなければという意味での独りぼっちの感覚。
美術鑑賞とか、本を読む、映画を見るとか、そういう瞬間を生み出すから、みんな大事にしているんじゃないかな、と思います。



―ともやす  場所、空間で詩を表現するみたいなものはありますか

―最果  ファッション誌で読みました!という感想をいただくことが結構あって。
詩を読もうと思って、詩集を開いたというわけではなく、全然違う感覚で、詩に出会っている、というのが私には、インパクトで。
なんか書いてあるから、取りあえず読んだら面白いなと。その詩に、ふいに出会ったからこそ、奥のほうまでしみ込んできたという。
そう考えると、不意打ちで詩を読む瞬間ってないなと思ったんです。
街のポスターに詩が書かれているとか。看板に詩が書かれていて、つい読んじゃったとか、電車の中に詩が書いてあると、おもしろいなと。
詩の出会い方としておもしろいな、やりたいなと思い、そこから空間に詩を置くということを考えるようになりました。


それが、今回のようなインスタレーションにつながったようです。
最果さんは、「詩は日常であってほしい。」と言います。


―最果さん  詩集は、日常の一冊としては、なかなか触れづらいけど、日常の景色の中に詩が一行あったら、ハッとなるのではないのかなという期待もあって考えています。



一言、一言がビビットに入ってくる、この番組で大切にしたいことを、大切な部分を乗せられる言葉を、たくさんいただいたインタビューでした。
表現と向き合うこととはどういうことなのか、ひとりひとりが解釈して、自分だけの世界でそれを持つということは、どういうことなのかということを、言葉にして聞かせていただいた気がします。

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読者が会場を歩き回り、空間全体で言葉を体感するインスタレーション「詩の展示」

【最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。】
●2020年8月8日(土)~ 9月27日(日)
●三菱地所アルティアム(イムズ8F)
●一般:400(300)円  学生:300(200)円
※本店オリジナルのミニ本付き特別チケットは販売終了しました。


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また、この内容はYouTubeポッドキャストでも配信しています。 

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発信局:LOVE FM(http://lovefm.co.jp/) 
放送エリア:福岡県全土、熊本、長崎、佐賀、大分、山口の一部と九州北部     
福岡局76.1MHz 北九州局82.7MHz 福岡タワー局 82.5MHz      
パーソナリティ:佐藤ともやす        
放送日時:毎週日曜日 10:30-11:30

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