映画の経済を絶やさない!「仮設の映画館」前半(ゲスト:映画作家 想田和弘さん)

5月17日は、映画作家の想田和弘監督にオンラインインタビューにて、
新型コロナウイルスの影響で、停滞している「映画の経済」を回復させるための試みとして
映画配給会社『東風』と始めた『仮説の映画館』についてお聞きしました。
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あなたの暮らしを豊かにするヒントを、 オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、 はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。 
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観察映画という手法で、ドキュメンタリー映画作家として、世界的にも評価の高い想田監督。
今の状況における想いと、観察映画における想いをお聞きします。
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想田和弘(そうだ・かずひろ)監督
1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒。
スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒。
93年からニューヨーク在住。映画作家。
台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。
<ホームページより引用>
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岡山の精神科医、山本さんを追った映画『精神』の続編である『精神0』。
山本先生が精神科の医師を引退することになり、カメラをとったという、この『精神0』のキャンペーンのために、N.Y在住の想田監督は、日本に戻ってこられました。(急事態宣言のため、ほとんど外に出られていないそうです)

コロナウイルスに伴う昨今の劇場事情から、上映する機会がなくなり、始めたという『仮設の映画館』の取り組みについて、お話を伺いました。
N.Yでの新型コロナウイルスの影響もお聞きしましたが、日本に戻ってくるタイミングもぎりぎりで、大変だったようです。

-ともやす 映画業界は今回のコロナウイルスで、一番といっていいほど影響を受けていると思うのですが。

-想田和弘監督(以下、想田) そうですね。あらゆる業界が影響を受けていると思うのですが、映画業界は大変ですね。
映画館自体がピンチです。
小さい映画館は持ちビルではないので、毎月の家賃、それから人件費、休館だと収入はゼロですから。
僕らのドキュメンタリーや、アート系の映画が上映される、ミニシアターというのは、元々、経営が厳しいので、このままだと、夏まで持たないという所が多いんです。
どんな業界でもいえるのですが、『出口が塞がれてしまう』というのは、それ以前の部分も、全部詰まってしまうんです。

配給会社は、作品にお金をかけてプロモーションしても、映画館が開かないことには、それを塩漬けにしなければならない。塩漬けにするということは、お金が入ってこない。
その前の制作の部分も、長年かけて作って、これから公開です、となったところで、映画館が開かないと、お金が入ってこない。
あらゆる新作の制作もストップしています。そうすると、今度、映画館が開いても新しい作品がない。

-三好P そんな中で、想田監督と、配給会社の東風さんで手掛けられたという『仮設の映画館』の取り組みを教えていただけますか?

-想田 ネット上に仮設の映画館を作りました。ここで、ご覧になる皆さんには、1800円をお支払いいただく。その半分くらいが、映画館に行く、後の半分を制作会社と配給会社で分配するという流れです。
普段の劇場公開と同じお金の流れなんですが、普段の映画の経済をそのまま保存する形で、
新作映画をネット上で公開する。そういう仕組みを東風さんと実行しました。
それが、仮設の映画館です。

-ともやす 映画を見る私たちは、まず映画館を選ぶんですね。

-想田 そこがちょっと味噌で。例えば、僕たちの『精神0』は、全国35の映画館で上映する予定だったんですが、その劇場さんに仮設映画館に参加してもらっています。
福岡だと、KBCシネマを選び、映画を見ていただくと、半分くらいのお金が、KBCシネマに入るようになっています。
そうすると、休館中でも、収入が得られるんです。

-三好P シンプルだけど、いい仕組みだと思います!配信だけど罪悪感なく見られるというか(笑)。映画館にお礼ができるというか。

-想田 ありがとうございます。普通、配信というのは、映画館にとっては敵なんですよ。
配信で見られても、映画館には1銭も入ってこないので。
それを逆手にとって、今回は、配信をすることによって映画館にも生き残ってもらう。
発想の転換ですね。それを東風さんと一緒にできたのはよかったと思っています。

-ともやす 映画体験って、劇場体験でもあるわけですもんね。

-想田 普段の観客の皆さんの行動を、そのまま再現できるといいなと思っているんです。
普段、この映画どこで見ようかな?と、好きな映画館を選んでから行きますよね。その感覚を、なるべく再現できるようにしています。

人によっては、ふるさと納税みたいだという人もいて。東京にいるけれど、KBCシネマで見たという方もいました。

-三好P 実際に見た方の反応はいかがでした?

-想田 見てくださった方の熱量がすごいです!
ツイッターとか見る限り、もしかすると普段の劇場公開よりも、反響が大きいのではないかというくらいです。見る層が違うのかもしれないですね。

普段、劇場ではシニア層が多いのですが、今回配信ということで、若干、若い層だったのかもしれません。
ネットで配信ことで、デジタルに不慣れな方、僕の親世代はクレジットカードでどうやって払うの?という感じで。普段映画館に行って、現金で支払っている方々には、申し訳ないなと感じています。

ただ、これはあくまでも『仮設の映画館』なので、コロナウイルスの問題が落ち着いたら、劇場でも上映予定です。そういう方々には、少し、待っていただくしかないのかなと。

-三好P この取り組みの『仮設の映画館』という名前ひとつにも、想田監督たちの
「やっぱり劇場に行ってほしい」というメッセージを感じます。そして仮設なんだと言い切る、この姿勢にもぐっときました。

-想田 これは、東風さんのアイディアなんですが……
東日本大震災のときにも、仮設住宅って作られましたよね。
なんで仮設住宅が作られたかというと、仮設のものを作ってまで、必要なものなんだということなんだと思うんです。
つまり、住む場所というのは、生きる上で絶対に必要じゃないですか。
そういう、必要不可欠なものというは、仮設でも作る必要があるんだということであって。
東風さんがこれを『仮設の映画館』という風に名付けたのは、そういう思いがあったんです。
つまり、映画も私たちにとって、必要なんだ!
仮設で作ってまでも、見ないといけないということなんです(笑)
そして、目標はこの仮設のものを閉じることなんです。

-三好P これは僕自身も答えが出ていないんですが、こうやって、配信で作品体験ができてしまうと、劇場で映画を見ることって、どういうことなんだろう。
どういうベネフィットを与えてくれるから、やっぱり劇場じゃなきゃだめなんだ、ということ。
僕らは、直感的にわかっているんですが、そうではない世代や、コロナ以降に劇場というものを知らない、体感したことがない人たちにどう伝えていったらいいんだろうかという問題点をふくんでいると思うんです。
想田監督はそのあたりを、どのようにお考えで、この取り組みなさったのでしょう。

-想田 僕が映画を作っているのって、映画館で作品を見せたいという思いからなんです。

映画作るのって、いろんなハードルを乗り越えないといけないんですが、それを乗り越えらえるのは、映画館でみんなに見てもらえるからなんです。

これが、配信しかしないというのであれば、途中でくじけてしまいそうです(笑)。
それくらい、僕にとっては、映画館で見てもらうというのが、すごく大事です。

僕自身が、映画館で映画を見るのが大好きなんです。

なんで好きなのかなって考えると、人類学的な意味があるんじゃないかと思うんです。
人間というのは集いたがる生き物なんですよ。
社会的動物なので、私たちには、物理的に集うということが、根源的欲求として、どこかにあるんです。
だから、太古の昔から演劇や、お祭りを発達させたりしてきているわけです。
その延長線上に映画があるんです。
大勢の人たちが、一つのスクリーンを見つめながら、官能しあうというんですかね?
誰かが笑うと、笑いが伝染するってあるでしょう?
一人で見ているとわからなかったユーモアが、発見できるんですよ。
黙っていても、お互いに官能しあっているんですよ。


こういうことが、人間にとっては、どうしても必要なことなんです。
だから、映画館っていうのは、なくなりそうでなくならない。
テレビが出たとき、DVDが出たとき、映画館の数が減ってはきても、なくならないのです。

これは、オンラインではできないんですよ。












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三好Pが、言葉では説明できないと言っていた
「劇場でなきゃだめなんだ!」
の答えをいただきました!
後半は、『精神0』、観察映画の魅力についてお話いただきます。
続きは、次回。


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