ルネ・ユイグのまなざし「フランス絵画の精華」(九州国立博物館)後半

3月1日は先週に続き、九州国立博物館で開催中『ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華』をお届けします!

……が、只今、
現在新型コロナウイルス感染症拡大防止のため
九州国立博物館臨時休館中です。

一日も早い収束を願うばかりです。

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この番組は、毎週日曜の朝にお届けする、
「文化の楽しみ方」が わかる、見つかる、共有できる! 
カルチャー、アートプログラム、 明治産業プレゼンツ「OUR CULTURE, OUR VIEW」。
あなたの暮らしを豊かにするヒントを、 オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、 はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。 
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先週、フランス絵画の、17世紀の古典主義から18世紀のロココ、19世紀の新古典主義、ロマン主義を経て、印象派誕生にいたるまでの流れをたどる展覧会、『ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華』を第2章まで、任研究員の臺信祐爾さんに解説・ご紹介いただきました。

さて、今週は、【第3章】絶対王政に終止符を打つ、フランス革命から印象派誕生前夜までと、【第4章】のデッサンをご紹介します。

17世紀の古典主義美術と、18世紀半ばのポンペイ遺跡などの発掘をきっかけとする古代美術への関心から、「新古典主義美術」が生まれたと言われています。
その中の代表例、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルが描いた絵画には、精密な写実性とともに曲線が生み出すデフォルメが共存しています。

―九州国立博物館 特任研究員の臺信(だいのぶ)さん(以下、臺信) 
アングルの裸体画《グランド・オダリスク》、裸の女性が長椅子に寝そべっている姿を背中側から見た絵が有名なんですけれども、よく悪口として、「こんなに脊椎が長い人間んがいるわけない」と言われるという有名な話があります。
それと、同様に今回来ている肖像画、《オルレアン公フェルディナン=フィリップ、風景の前で》をご覧いただいたと思いますが……。
とてもきれいな、素晴らしい絵なんですが、改めてよく見ると、こんなに腕や首が長い人が現実にはいないだろうと思われます。
でも全体として見ると、調和が取れていて、とても美しい。彼の美意識の中では、解剖学的な正確さには興味がなくて、自分の考える美しさを表現すると、こうせざるを得なかったということを感じさせます。
絵画上の表現のテクニックは、新古典主義の旗手と言っても過言ではないくらい、彼のこの作品は、今回の69点ほどの油絵の中でも、ピカイチの作品ですね。

―ともやす  確かに腕だけ見ると『長い』と感じますが、それが威厳を感じさせる佇まいですね。

―三好P 画面全体の均衡の美しさを優先した結果、こうなったんだなという。
そこに、作家の存在『私はこういう美しさを提案したいんだ』ということを感じます。

―臺信 18世紀になると、ポンペイの街の発掘によって、これまで知られていなかった壁画などがタイムカプセルのように発見され、人々の中に古典・古代の時代に興味が生まれていきます。
ナポレオンなども戦争で行く各地に、学者を連れ、いろんな研究させています。
そうして、これまで、異国の地の「風の便り」で聞いていたものが、現実のものとなって立ち現れる。社会的な意味で、人々の見ることのできる、触れることのできる距離感が随分変わったんですね。
これまでとは違う要素が入ってきた時期なんだろうなと思います。

―ともやす いろんな情報があると、それに影響される人も、それぞれで異なってくるでしょうし。世界が広がった時代だったんでしょうね。
変なこと聞きますが、裸婦って昔から描かれているものなんですよね(笑)

―臺信 裸婦、見てみたくないですか?(笑)

ここで、マネの代表作《草上の昼食》で、これまでの「裸体の女性は神話や歴史上の出来事を描いた作品において登場するもの」から、「現実のある瞬間を切り取った絵である」というものに変化していった流れを解説していただきました。
マネは伝統を破壊した人だと言われているのですが、マネが当作品で描いた「現実の裸体の女性」は画期的なものであり、このころから、目の前の事、自分が感じる不安な気持ち、狂喜だとかを表現するということが、許される時代になってきたそうです。

ポール・ボドリー《ウェスヌの化粧》では、神話や聖書の物語であれば裸婦を描いてもいいとする古典主義にのっとり描かれている風景画の中のヴィーナスの図でありながら、ヴィーナスの足がうっすら汚れているのが見え、これは、実は、現実の世界を匂わせているのではと、気づかされます。

*****

―三好P この章の最後にマネの印象派につながる作品と思われる、人物の存在が明らかな1枚がきているのにすごく感動しました。

―臺信 これまで見ていただいた絵は筆跡が一切見られない、つるっとした表現ばかりでしたが、このマネの黒いドレスの女性を書いた《散歩》は、いろんなところに筆跡が見られるます。しかも、印象派的な色の混合に近いタッチが見られます。


【第4章】では、絵画作品ための習作、画家の構想や 観察を記録する役割であるデッサンは、それ自体を鑑賞しても楽しめるという、その魅力をご紹介しています。
18世紀の画家たちが好んで用いたという、黒・赤・白の3色チョーク の豊かな表現をじっくりご鑑賞してみてください。

―臺信 なかなか見ることができない、画家の息遣いが見える、その人がどういうところに興味があったのか個性が見える、じっくり見ていただきたいコーナーです。

―三好P デッサンにもトレンドがあるんだなというのが分かりますね。 

―ともやす 作家によって、こだわっている所がデッサンからわかる気がして、おもしろかったですね。


いろんな角度で見ることを発見できる展覧会、『ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華』は九州国立博物館にて開催中です。



ルネ・ユイグのまなざし 特別展「フランス絵画の精華」 大様式の形成と変容
【九州国立博物館】 
会期:令和2年2月4日(火)~3月29日(日)
休館日:月曜日
    ただし2月24日(月・休)は開館、2月25日(火)は休館
開館時間:日曜日・火曜-木曜日
                9時30分-17時00分(入館は16時30分まで)
                金曜日・土曜日(夜間開館)
                9時30分-20時00分(入館は19時30分まで)
観覧料:一 般 1,600円(1,400円)高大生 900円(700円)小中生 500円(300円)
    (夜間割引料金)一 般 1,400円 高大生 700円 小中生 300円



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発信局:LOVE FM(http://lovefm.co.jp/) 
放送エリア:福岡県全土、熊本、長崎、佐賀、大分、山口の一部と九州北部     
福岡局76.1MHz 北九州局82.7MHz 福岡タワー局 82.5MHz 
パーソナリティ:佐藤ともやす 
放送日時:毎週日曜日 10:30-11:30

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