「アジア美術にみるLGBTと多様性社会」展(福岡アジア美術館)

2月9日日曜日の放送は、福岡アジア美術館のコレクション展
『アジア美術にみるLGBTと多様性社会』を番組ではおなじみの学芸員、趙純恵さんに、ご紹介いただきました。


この番組は、毎週日曜の朝にお届けする、
「文化の楽しみ方」が わかる、見つかる、共有できる! カルチャー、アートプログラム、
 明治産業プレゼンツ「OUR CULTURE, OUR VIEW」。

 あなたの暮らしを豊かにするヒントを、 オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、 はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。 



福岡市は、性的マイノリティの方のパートナー関係を尊重するために「パートナーシップ宣誓制度」を2018年から始めました。

今回のこの展示は、これを記念し、アジア美術館のコレクションの中から、LGBTQの当事者の作品や、現代アジアにおける多様性社会の在り方を問う作品をご紹介しています。

―ともやす パートナーシップ制度とはどういう制度ですか?

―アジア美術館 学芸員 趙純恵(ちょうすね)さん(以下、ちょう) 配偶者と同様に市立病院で、診療内容や病状説明を受けられたり、患者本人と連盟で手術の同意書に署名したり、市営住宅の入居申し込みなど、婚姻関係と同様の取り扱いになる制度です。

―三好P これまで認められていなかったものが、婚姻関係と同様の扱いになるんですね。

―ちょう 法的効力がないので、結婚のとの違いはありますが、携帯の家族割や、クレジット会社のマイレージの共有など、民間のサービス提供が徐々に始まっています。
もっとこの動きがダイナミックになって、より前進するように願っています。

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「パートナーシップ制度」について伺ったうえで、今回の展覧会についてお話いただきました。
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―ちょう このような展示は、初めてなのでドキドキしていたのですが、上司、先輩、同僚の理解もあり実現しました。おそらく、公立美術館が、LGBTQという名のついた美術展をやるのは、初めてではないかと思います。

―三好P 展示の導入部分で、改めて『人々の性自認・LGBTQとは?』ということが、しっかり説明してありますね。

―ちょう そこで、「戸籍に記載されている性別・自らの身体の性」「自認する性・性自認」「どういった人を好きになるかという・性的思考」「服装やしぐさ、言葉使いなどの表現する性」その組み合わせによって、多様な性を持っていると言われています。
様々な組み合わせがあるにも関わらず、特定の性の形は尊重され、なぜそうではない形が差別されるのかという問いが、明確に浮き上がってきます。

―ちょう この展覧会を通じて勉強を始めたのですが、本などを読んでいくと、それぞれの方たちがその時代を通じて、この言葉を勝ち取ってきたんだなと思いました。

世界の人口の8%が性的マイノリティと言われていまして、左利きの人と同じくらいの割合なんです。

―三好P だからこそ、それを受け止められる社会である必要がある。

―ともやす こんな勉強も必要もなくなる社会になるのかな、なってほしいですよね。三好さんは、今回の展示を見て、どんなメッセージを感じましたか?

―三好P インド、ベトナム、スリランカ、いろんな国の性的マイノリティの方の表現、それぞれの国の中での立ち位置が、見えてくる作品もあるし、その中で彼らが、どういう生き方を選んでいこうとしているのかが見える作品もありました。
僕は、ファンティファムの「家族を再定義する」が、気になりました。

―ちょう この作品があったから、この展覧会をやったと言ってもいい作品です!
現在のホーチミンから、ベトナム戦争の末期にアメリカに難民として移住し、そこでパフォーマンスを学んだ作家の作品です。
美術というのは、美しく愛でるものだけではなくて、違和感、怖さを伝えてくる、鑑賞者に対して安らぎを与えてくれないものでもある……まさにそういう作品です。

―三好P 静かな気迫を感じたんですよ。ビジュアルとしても、多層的、社会的背景や、個人の経験としての背景が織り込まれているんだろうなと感じました。

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後半は、移民や日本に移ってきた外国人労働者などをテーマに扱った作品が、展示されています。

―ちょう 本来、美術館というのは、物がある空間であり、その作者のひととなりというのは、あまり想像できないものですが。
今回は「人間」「作者」がテーマなので、作家を際立たせるために、一人ひとりが、どういう背景で、こういう作品を作るようになったのかというのを、すべてパネルにして掲示しています。

この展覧会を作るうえで、マイノリティを特別視したいわけではなくて、そもそもマジョリティて誰なの?ていうことであると同時に、マジョリティはどういう振る舞いをしてしまっているのか、当事者意識や、想像力を持つきっかけになればと思っています。
誰もが、マイノリティ、マジョリティそれぞれその側面を持っていると思うんです。

―ともやす 会場には、本や資料のようなものもあるんですよね。

―ちょう 美術作品だけではなくて、絵本や簡単な専門書、学術論文集、作家に関する展覧会カタログなどを、真ん中でゆっくり読めるようにしています。

森山至貴さんの「LGBTQを読みとく―クィア・スタディーズ」という本は、今回の展覧会を作るうえでの指針になりました。
その中に「良心や道徳だけでなく知識が必要だ」と書かれている章があるのですが、
差別してしまった側を『悪気がないから許してあげて』では済まされない、知らないということで、不用意に傷つけてしまうということをいっています。

この展示をきっかけに、いろんな角度から知っていただけたら、また、少しでも興味を持っていただけるヒントになればいいなと思っています。

―ともやす アートや、美術館がそういう役割を持つというのは、大事なことだと思います。そういう事実を、僕らはもっと知るべきですね。

―ちょう 既存の価値を愛でたり、再評価するのが、美術館ですが、まだ、社会の中で揺れ動いている事柄を、美術館の中で考えてもらうというのも、大事だと考えています。
こういう動きが、全国の美術館に広がっていけばいいなと思っています。

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コレクション展
アジア美術からみるLGBTQと多様性社会

期間:2019年12月2日(月)~2020年3月17日(火)
会場:アジアギャラリー
閲覧料:一般200円 高校生・大学生150円 中学生以下無料
展示品:絵画、写真、彫刻、映像、インスタレーションなど約35点
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発信局:LOVE FM(http://lovefm.co.jp/) 
放送エリア:福岡県全土、熊本、長崎、佐賀、大分、山口の一部と九州北部     
福岡局76.1MHz 北九州局82.7MHz 福岡タワー局 82.5MHz 
パーソナリティ:佐藤ともやす 
放送日時:毎週日曜日 10:30-11:30

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