福岡サイトスペシフィック現代建築 前編(ゲスト:建築家水谷元さん)

1月19日の放送は、Atelier HUGE、建築家の水谷元(はじめ)さんをお招きして、
「福岡サイトスペシフィック現代建築」前編をお届けします。

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この番組は、毎週日曜の朝にお届けする、「文化の楽しみ方」が わかる、見つかる、共有できる! カルチャー、アートプログラム、
明治産業プレゼンツ「OUR CULTURE, OUR VIEW」。 
あなたの暮らしを豊かにするヒントを、 オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、 はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。
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なんと!この番組始まって初めて、建築のお話です。
2週にわたってお届けする「福岡サイトスペシフィック現代建築」!
今週は、福岡のレジェンダリーな建築物について、建築家の水谷元さんに、いろいろとお聞きしました。

水谷さんは、シーサイドももちの都市計画をお父様が担ったのをきっかけに、4歳で、神戸から福岡・能古島に移住し育ったそうです。

幼いころからお父様の仕事を見ていて、自然な形で建築という仕事に興味を持っていきました。
そのころのお父様は、都市計画も建築も両方され、空間がイメージできる、珍しい都市計画家と評されていたので、
水谷さんは、都市がわかる(都市計画ができる)建築家を目指しているそうです。


お父様からの指南もあり、子どものころから、本を読むことは続けていると言います。
建築は、生活に密接なものなので、専門書もありつつ、文学、芸術、料理、社会人文学などジャンルは、多彩。

―ともやす 建築の世界って、何もないところから、世界を作る、空間を作る仕事で、一つのことだけ極めていても、なりたたないわけですよね?

―三好P そうですよ!その建物の中で、運動するかもしれない、料理をするかも、本読むかもしれない……

―水谷さん そうなんです!住宅設計するときには「平日と土日祝日の24時間を円グラフに書いてください」と、依頼主へのヒアリングからスタートするのが一般的なんです。
ここは、どこで、なにをしているんですか?と。

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―ともやす  今ある、建築の見方についてもご教授いただければと思うのですが。
 (水谷さん、建築専門誌の編集などもされています)

―水谷さん  今、サイトパシフィックなイベントて結構あるじゃないですか?(例えば、愛知トリエンナーレなど)
その中で、建築って、アートを体感するための重要なファクターになっているのに。
三好さんが、あまり知らないっていうので、よし今日は話してやろうと(笑)
福岡って現代美術館がないですもんね……

―水谷さん  本などで、すでにたくさん語られていることをお話しするよりも、
自分が建築家として体験し、思うこと、とらえたものを紹介できればと思います。
アートの番組なので、わかりやすいところから、前川國男さんの福岡市美術館を。

あそこ、建築を楽しむという視点ではなく、普通に行ったとき、どういう風に感じますか?

―三好P  赤茶色のレンガの作りが落ち着いた空間で、重厚な感じがするけれど、中に入るとすっと抜けるような、広がりがあるところが好きです。

―ともやす  僕は照明が好きです。

―水谷さん  照明器具は当時、既製品でいい照明があまりなかったので、建築家がオリジナルでデザインしていたんです。

―水谷さん 『福岡市美術館・設計者・前川國男』で検索すると、まずタイルのことが一番最初に出てくるんですね。建築の勉強のためのフィールドワークでは、必ずといっていいほど見に行きます(笑)
あの外壁は、レンガ色なんですが、前川國男さんが開発したタイルで、打ち込みタイルというものです。

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あんなに、足を運んでいる福岡市美術館なのに、意外と知らなかった建物のことを、もう一度丁寧に水谷さんに解説していただきました。

展示室をつなぐ、前川國男建築の特徴エスプラナードや、ジョルジュ・スーラのグランド・ジャット島の日曜日の午後の絵を参考に、大濠公園に位置する美術館に込められたであろう目的を伺いました。
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―水谷さん  大濠公園は都市公園として開けて、みんな思い思いの行動をしているけれど、視線が抜けすぎていて、落ち着く場所がない。
エスプラナードという公共スペースで、一人になれる場所を作っているのが、前川國男建築かな?と思います。

前川國男さんは、たくさん美術館を設計していて、福岡市美術館はその集大成だと言われています。

―ともやす  なるほどー、そういう目線で見ていくと施設巡りがまた楽しくなりますね。

―水谷さん  他には、西日本シティ銀行の話、これは触れておかないとですね。
再開発のために、解体されるという発表がありまして、これは、同業者の中でも賛否両論あるんですが。
いわゆる歴史に残る、教科書に載るような名建築では「残さなくていいのか」という意見が、必ず出ます。

博多駅の2年後の1971年に竣工している、磯崎新さんの建築ですが、その当時、福岡の玄関口である、『博多の地のシンボルとしてふさわしい建築物に』という依頼だったようです。
後に、磯崎さん自身が文献の中で言っているのですが、建物そのものが広告にならないと意味がないと。
まさにそれを体現している建物ですね。
そういう意味でも、今回解体されるのは、必然なのかもしれない。
もう役割は終わっているのかもしれないと思います。

磯崎さん自身が、都市の新陳代謝を積極的に考えている方で、解体にネガティブになることはないという風に考えます。

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―水谷さん  建築は、物理的な耐久性以上にライフスタイル、時代の変化によって寿命が決まっているんです。
ライフスタイルによって変化するものに、対応していかないといけないわけです。
それが、建築の決め手になります。
物理的に存在させるだけであれば、メンテナンスさえしていればいいわけですから。

―三好P 残さなきゃという反射的に思ってましたが、この話を聞いて、それだけではないんだということがわかりました。

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物質としてあるだけではないということが、福岡に存在する名建築を例に、よくわかりました。
ちなみに、西日本シティ銀行のあの建物、竣工当時は真っ赤な建物だったそうですよ。
次回は、近年の建築、都市計画についてお話しを伺います。

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