作品の裏ストーリーから楽しむアート【ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち】(福岡市美術館)
10月6日の放送は、「作品の裏ストーリーから楽しむアート」と題して、現在、福岡市美術館で開催中の展覧会『ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち』を、学芸員の忠あゆみさんにご紹介いただきます。
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時代は19世紀。科学が発展し、蒸気機関車や電話が発明され、産業の発展と共に、現実主義、物質主義の潮流にあり、目で見えない世界が軽んじられるようになってきたときに、モローは幻想的な内面を描くことで、真実を見出そうとしました。
その真逆に印象派と言われる作家たちがいます。
光学が発展し、光の印象を写すために点描を使い、目に見える物を、目に見えたように写すことの新しさを追及していったのが印象派です。
肖像写真が撮られ始めたのがこの頃だそうです。
忠さん モローが言った印象的な台詞に、「自分は手に触れるものも、目に見えるものも信じない。見えないもの、ただ感じるものだけを信じる」というのがあります。
モローにとって、芸術が目指すものは現実ではなく、現実の皮をはぎ取ったその奥に芸術が表すべきものがあると考えていたのではないでしょうか。
では、今回の4章で構成される展覧会のお話しを聞いていきます。
第1章 モローが愛した女たち
生涯独身であったモローが、母や、長年連れ添った恋人との交流を伝える素描や手紙から、描かれた女性だけではなく、モローの実生活においての女性たちとの関係性、プライベートなモローの姿が見えます。
母親への愛情も資料から見て取れるそうで、母親とモローは深い愛情で結ばれていたようです。
ともやす その母親への手紙(メモ)とはどんな内容なんですか?
忠さん 今度の展覧会でこんな絵を描くんだ!というような作品についてです。
母親は理解者だったのではないでしょうか。
ともやす 母ちゃん、おれやるよ!みたいな内容ですよね(笑)恋人に対してはどんな感じですか?
忠さん 自分が死ぬときには、手を握っていてほしいなど。この恋人は写真を見る限り、強気なイメージを受けますが、お互い対等な関係を築いていたのかなと感じます。
ともやす モローの絵ってちょっと、怖いイメージがあったんですが
忠さん 作品とパーソナリティーが重ならないですよね(笑)。
「生首」の絵の人って思って見ると意外な感じがします。どちらかというと、とても愛情深い人という印象で展覧会はスタートします。
第2章 《出現》とサロメ
新約聖書に登場するユダヤの王女サロメと、ヨハネの首を描いた印象的な作品。
忠さん 他の画家たちが描くサロメとは違う、凛として、自分の意思でヨハネの首を求めているサロメとモローはとらえている。
モローは、この関係性を独自に読み込んで表現しているのが新しいんです。この絵でサロメの印象がガラッと変わったと言われています。
ともやす 「出現」の色がついていない、線だけで描かれている背景が気になるんですが。
忠さん モローは一つの作品に長い時間をかけて暖める作家だったようで、一回展覧会に出した後にも、少しずつ手を加えていたと考えられています。
このサロメを装飾的な、宝箱のように仕立て上げたかったようで、サロメの内面にある、強い意志・想いが外側に出るような装飾を施したかった。それを演出するために、線描を加えたのではないかと思います。
第2章では、「出現」という一つの作品だけではなく、それができるまでのいろんなバリエーションの習作が展示されています。
アイディア段階のスケッチから、ヨハネと向かい合っているサロメの力強いポーズが生まれるまで(モデルを使って足の向きなどを研究している)が、ここではわかります。
今週は、第2章まで!続きは来週お届けします。
「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」
■福岡市美術館 (福岡市中央区大濠公園1-6)
■会期:10月1日(火)~ 11月24日(日)9:30~17:30
※10月の金・土曜日は午後8時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:毎週月曜日
※ただし10/14(月・祝)、11/4(月・振休)は開館。
10/15(火)、11/5(火)は休館
■観覧料:一般1,500円、高大生800円、小中生500円 ※前売りは200円引
ぜひradikoのタイムフリー機能でお楽しみください。
発信局:LOVE FM(http://lovefm.co.jp/)
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この番組は、毎週日曜の朝にお届けする、「文化の楽しみ方」が
わかる、見つかる、共有できる!
カルチャー、アートプログラム、
明治産業プレゼンツ「OUR CULTURE, OUR VIEW」。
あなたの暮らしを豊かにするヒントを、
オリジナルな視点(VIEW)を持ちあわせるゲストとのトークや、
はたまた、パーソナリティが展覧会に突撃したりし、お伝えします。
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神話や聖書をテーマにした作品で知られるフランス象徴主義を代表する画家、ギュスターヴ・モロー。その素顔は謎めいていると言われています。
友人たちからは、”パリの真ん中に引きこもった神秘家”と言われたほど、引っ込み思案で、頭の中で創作の世界を広げていくというタイプ。決して社交的ではなかったそうです。
そんなモローですが、美術学校の教師をしていた時の教え子には、後の20世紀絵画の作家として有名な、マチスやルオーなどがいるそうですよ。友人たちからは、”パリの真ん中に引きこもった神秘家”と言われたほど、引っ込み思案で、頭の中で創作の世界を広げていくというタイプ。決して社交的ではなかったそうです。
時代は19世紀。科学が発展し、蒸気機関車や電話が発明され、産業の発展と共に、現実主義、物質主義の潮流にあり、目で見えない世界が軽んじられるようになってきたときに、モローは幻想的な内面を描くことで、真実を見出そうとしました。
その真逆に印象派と言われる作家たちがいます。
光学が発展し、光の印象を写すために点描を使い、目に見える物を、目に見えたように写すことの新しさを追及していったのが印象派です。
肖像写真が撮られ始めたのがこの頃だそうです。
忠さん モローが言った印象的な台詞に、「自分は手に触れるものも、目に見えるものも信じない。見えないもの、ただ感じるものだけを信じる」というのがあります。
モローにとって、芸術が目指すものは現実ではなく、現実の皮をはぎ取ったその奥に芸術が表すべきものがあると考えていたのではないでしょうか。
では、今回の4章で構成される展覧会のお話しを聞いていきます。
第1章 モローが愛した女たち
生涯独身であったモローが、母や、長年連れ添った恋人との交流を伝える素描や手紙から、描かれた女性だけではなく、モローの実生活においての女性たちとの関係性、プライベートなモローの姿が見えます。
母親への愛情も資料から見て取れるそうで、母親とモローは深い愛情で結ばれていたようです。
ともやす その母親への手紙(メモ)とはどんな内容なんですか?
忠さん 今度の展覧会でこんな絵を描くんだ!というような作品についてです。
母親は理解者だったのではないでしょうか。
ともやす 母ちゃん、おれやるよ!みたいな内容ですよね(笑)恋人に対してはどんな感じですか?
忠さん 自分が死ぬときには、手を握っていてほしいなど。この恋人は写真を見る限り、強気なイメージを受けますが、お互い対等な関係を築いていたのかなと感じます。
ともやす モローの絵ってちょっと、怖いイメージがあったんですが
忠さん 作品とパーソナリティーが重ならないですよね(笑)。
「生首」の絵の人って思って見ると意外な感じがします。どちらかというと、とても愛情深い人という印象で展覧会はスタートします。
第2章 《出現》とサロメ
新約聖書に登場するユダヤの王女サロメと、ヨハネの首を描いた印象的な作品。
忠さん 他の画家たちが描くサロメとは違う、凛として、自分の意思でヨハネの首を求めているサロメとモローはとらえている。
モローは、この関係性を独自に読み込んで表現しているのが新しいんです。この絵でサロメの印象がガラッと変わったと言われています。
ともやす 「出現」の色がついていない、線だけで描かれている背景が気になるんですが。
忠さん モローは一つの作品に長い時間をかけて暖める作家だったようで、一回展覧会に出した後にも、少しずつ手を加えていたと考えられています。
このサロメを装飾的な、宝箱のように仕立て上げたかったようで、サロメの内面にある、強い意志・想いが外側に出るような装飾を施したかった。それを演出するために、線描を加えたのではないかと思います。
第2章では、「出現」という一つの作品だけではなく、それができるまでのいろんなバリエーションの習作が展示されています。
アイディア段階のスケッチから、ヨハネと向かい合っているサロメの力強いポーズが生まれるまで(モデルを使って足の向きなどを研究している)が、ここではわかります。
今週は、第2章まで!続きは来週お届けします。
「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」
■福岡市美術館 (福岡市中央区大濠公園1-6)
■会期:10月1日(火)~ 11月24日(
※10月の金・土曜日は午後8時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:毎週月曜日
※ただし10/14(月・祝)、11/4(月・振休)は開館。
10/15(火)、11/5(火)は休館
■観覧料:一般1,500円、高大生800円、小中生500円 ※前売りは200円引